サウンドプロダクション入門 DAWの基礎と実践
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2021/8/23
美学校の講座「サウンドプロダクションゼミ」をもとにしたDTM 入門書です。ビートとリズム、周波数、コードやメロディなどの基礎を学びつつ、DAW を用いた打ち込みやミックスなどの実践を行ないます。実践パートはAbleton live を使用します。
【サウンドサンプルはダウンロードOK! 】
★★★推薦コメント★★★
「いや〜実に面白い!
この本は単なるHow toものでもなければ、技術書でもなく、横川理彦という稀代の音楽家が記した音楽そのものの入門書であり音楽哲学書でもあります。DTMとかDAWが何なのか全くわからない人でも、音楽に興味がある人なら、部分的な拾い読みでも十分に面白いはず。もちろん本格的に音楽制作に関わりたい人には最良の入門書になるでしょう。この世界に40年以上も身を置くわたしも、改めてこの本で勉強しようと思ってます」
――大友良英(音楽家)
【目次】
CHAPTER 1 基礎編 音を聴く
CHAPTER 2 リズム編 良いリズムを作るために
CHAPTER 3 コードとメロディ編 ジャンルと知っておくべきこと
CHAPTER 4 ミックス編 サウンドデザインの力をつけるために
CHAPTER 5 アウトプット編 作品を発表する
CHAPTER 6 アーティスト研究 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者について
1957年鳥取市生まれ。4-D、P-Model、After Dinner、Metrofarce、Meatopiaなどに参加、コンピュータと生楽器を併用する独自のスタイルに至る。現在は、ソロとしての活動を中心にしつつ、個人レーベル「cycle」を運営。『Ableton Liveでエレクトロニック・ミュージックを作る』(シンコーミュージック、共著)ほかコンピュータと音楽に関する執筆や、海外のワークショップや美学校などでの講師歴がある。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
CHAPTER 1 基礎編 音を聴く
DAWを使った音楽作りを始めるときに最初に取り組むことは、音を出す環境作りです。音楽を正確に良い音で再生するためには、DAWやコンピュータ、スピーカーなどの音楽機材を揃えるのと同等に、音を出す場所を整えることが大事です。
世界を旅して、各地で音楽家やエンジニアと仕事をしてみると、DAWなどの機材は要点を押さえつつもシンプルで、音を出す部屋がちゃんとしている、という例がヨーロッパでもアフリカでも多かったです。機材は最新だけど部屋のレイアウトはいい加減、というシチュエーションでは、再生音が正確に聴こえないので、何がいい音なのか判別がつきません。
この章では良い環境を作るのとあわせて、どのように音を聴くのか、サイン波やフィールド録音を通じて、クリエイター側の「聴き取る能力」を育てる方法も提示しています。また、DAWで何ができるのか、DAWで音楽を作るのがどういうことなのかについても、大枠を考えてみました。DAWの最大の強みは、音を視覚化して取り組んでいけるところなので、画面で音を「診る」方法についても説明しています。
CHAPTER 2 リズム編 良いリズムを作るために
音楽の大きな焦点は、リズムにあります。20世紀のポピュラーミュージックを動かしてきたのは、ハバネラ、ジャズ、ロック、レゲエ、ディスコ、ヒップホップなど、いずれもはっきりとした個性を持つリズムの流行の変遷でした。これからの未来の音楽も、新しいリズムを軸にしていくことは間違いありません。音楽制作の中心はDAWなので、DAWの中でどのようにリズムを表現していくかが大きなテーマになりますし、DAW はリズムを扱うのに最適のプラットフォームです。
今のところ、DAWの視認性とパッと聴いた時の出来映えの良さから、ポピュラーミュージックや映画音楽では、どのようなサウンドであるかに関係なく、グリッドに正確に張りつけ、データをコピー&ペーストするやり方でBPMを一定にする方法が多いです。これに対する「クオンタイズしない」方法を明確に提示したのがJ・ディラで、AKAIのMPC3000に手打ちでビートを打ち込む方法で、リズムの自由さを取り戻しました。
本章では、DAWでリズムを作る際のポイントについて解説します。
CHAPTER 3 コードとメロディ編 ジャンルと知っておくべきこと
ノイズミュージックやヒップホップ、ミュージックコンクレートを作るのに必要なのは、強い動機と良い耳であって、コードやメロディの知識はほぼ不要です。逆に、ジャズやフュージョンを作るには、コードの知識は必須です。
ギターやピアノの経験があったり、バンドをやったことがあれば、メロディやコードのある程度の経験的知識があるので、DAWの技術的なことさえわかればコードに基づく曲を作ることができます。逆に、いきなりDAWで音楽作りを始めた人の場合、リズムは作れてもメロディやコードがわからないという声をよく聞きます。
ここで重要なのは、自分が作りたい音楽がどういうものなのかを見定め、それにはどれだけのコードやメロディに対する理解が必要なのかを知ることです。
この章では、コードとメロディの大きな見取り図を作り、自分が作りたい音楽のためにはどのゾーンの知識が必要なのかをつかめるようにしましょう。
CHAPTER 4 ミックス編 サウンドデザインの力をつけるために
DAWで作品を作っていくときには、以前であれば録音スタジオのエンジニアが扱っていたような具体的な音処理も、アーティスト自身が覚えておく必要があります。音楽作品の評価に「どういうサウンドなのか」ということの割合が大きくなっているので、どれくらいサウンドをコントロールできているのかがアーティストの力量を測る物差しになります。
また音響作品を作るという意味では、サウンドの処理の仕方(どう聴かせるか)自体にアーティストのメッセージが含まれている、とも言えます。
テクノロジーの進化と音楽という観点からすれば、ピアノという機械や電気楽器が音楽の世界そのものを拡張してきたように、今のテクノロジーの焦点は、コンピュータの音処理からどのような音楽が生まれてくるのか、というところにあります。
DAWで音を作っていくときの、基本的な考え方について検討していくことにしましょう。
CHAPTER 5 アウトプット編 作品を発表する
作品は、独立した価値を持つとも言えるし、他の人と共有されたときに初めて意味を持つとも言えます。一義的な定義づけは難しいですが、実際問題として作った音楽が誰にも届かないと、作品を作り続けるモティベーションを保つことは難しいです。
音楽家として独立した存在かどうか、客観的に判断するのは、委嘱作品が続いているかどうかだと言えるでしょう。
アウトサイダーアートの価値を十分に認めた上で、作品はどのように聴かれるのか、現在の音楽の価値も考えてみることにしましょう。
CHAPTER 6 アーティスト研究
アーティストたちが具体的に、どこから出発しどのように制作しているのかを知ることは、自分が音楽を作っていく上でとても良い参考になります。ここでは4人のアーティストを取り上げ、どのように音楽制作を始めたのか、どのような制作環境なのか、そしてどのように作品を発表しているのかを見ていくことにしましょう。
横川理彦『サウンドプロダクション入門 DAWの基礎と実践』(ビー・エヌ・エヌ)読了。Ableton Liveの画面を使った作曲講座。音を聴くところからはじまり、作曲理論だけでなくミックスやジャンル評論など、独学では得にくい楽曲制作におけるポイントの押さえどころがよくわかった。